旦那様は社長 *②巻*

きっと今まで、スーパーなんて自分で行ったことはないと思う。


「お前、オレをバカにしてんのか」

「違うけど。……だって野菜の見分け方とか、棚の奥の方が賞味期限が新しいとかって、悠河知らないでしょう?」


“そうなのか!?”

というような顔を一瞬したのを、あたしは見逃さない。


「今日の特売とか、どこの棚に何があるかとか……分からないでしょ?」


「分かった。買い物は慎也に頼む」


自分に買い物は無理だと諦めた悠河は、とんでもないことを言い出した。


「ダメだよそんなの!!」

「なにが」

「なにがって……副社長にそんなこと頼むなんて!!」


失礼すぎる。

ただでさえ、社長秘書の仕事を全部任せてしまっているのに。


「ああ、心配ない。慎也は学生時代ちゃんと自炊してたから。あッ、なんなら晩飯も作ってもらうか?」

「だ、ダメ──ッ!!」


悠河と藤堂さんは親友だから遠慮とかないのかもしれないけれど。


あたしと藤堂さんは上司と部下なんだから、そんなこと絶対に頼めない!!


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