『幸せ』を抱いて
――そうか…。
これは、ぼくの記憶。
いや、正確にはぼくの記憶じゃない。
正確には、あるひとりの人の一生。
その人の記憶。
その人の人生。
ぼくの、前に生きていた時の記憶。
欠けたピースが、少しずつ埋められていく。
前に生きた「俺」の最後の言葉。
あの声は「俺」の声だった。
『お前たちと出逢えて、本当に幸せだった…』
そう、幸せだったんだ。
最愛の人と、子供に囲まれて、幸せだと思えたんだ。
そして「俺」が子供に向けた言葉、子供の時に向けられた言葉も、『幸せ』という言葉だった。
そしてまた、お母さんがぼくに言ってくれた言葉も『幸せ』だった。
『幸せ』
この言葉にどれほどの想いを込めていただろう。
きっと明日のぼくにはわからない。
この記憶も、明日になれば夢から醒めたかの様に、消えてしまうもの。
だから、今言わせてください。