雲の隙間から
飛びたい男
街の明かりを見ながら高崎賢治はビルの屋上にいた。五分程前に、ゆっくり階段を登ってきたのにまだ息が切れている。額には汗が滲んでいる。

もう完全に親父だな

小さく呟いた。今年で35歳になった。大学を卒業して今の会社に就いたからもう12年になる。入社してから特に出世する事なく同じ仕事の繰り返しだ。特に疑問もなく、意見も持たず、今思えばあっというまだった。
給料も残業代カットなどにより当時とたいして変わらない。時々、この給料じゃ結婚も出来ないと同僚と話すが彼女なんて十年ほどいない。
出会いがないわけじゃないし、数年前までは合コンに顔だしたりしていたのだが、最近は何もかも面倒くさい。

< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop