俺様執事に全てを奪われて
…って有栖川は、ときめかないよなあ?

芝居だし

有栖川には恋人がいるし

まあ、いっか

深く考えると、わけがわからなくなるから

深くは考えない

そうそう

「…ぬぉっ…く、苦しい」

元が、ぐいっと着物の帯を引っ張った

金糸の入った帯はきらきらと輝いている

ついでにわたしの視界にも星が見える

…てか、息が、できない

「当たり前だ
きつく帯を巻いておいてやる」

「け…結構です」

元がさらにぐいぐいと帯を引っ張る

「む…無理です
もう、ムリ無理、ギブアップ!」

わたしは前にある鏡をバシバシと叩く

わたしのまわりにいるメイドたちがおろおろとしているのが、見えた

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