俺様執事に全てを奪われて
あれ?

もう終わってたのか?

「終わってるならそう言えよ」

「寝ていたからな」

一瞬だけ、顔を崩すと元が笑った

作り笑いではなく、愛想笑いでもない

心からの感情で、表情が崩れたように見えた

でも一瞬だけ

元が口もと緩めて、勝ち誇った顔をすると、わたしの黒髪を持ち上げた

首筋が露わになると、元が口づけをした

ゆっくりと吸いつく

ちゅっと音をたてて、唇を離すと満足そうに目を細めた

元の手が離れると、黒い髪がもとの位置に戻る

「元はどれくらい寝たのだ?」

「椅子で一時間くらい」

「他の二時間は何をしていた?」

「残っていた仕事を片付けていた
気がついたら、机に顔を伏せていた
時間を見て、一時間ほど過ぎていたら…寝ていたのだろ」

「大丈夫なのか?」

わたしは立ち上がると、元の顔を見る

元はにっこりとほほ笑むと、わたしの目じりを親指の腹で撫でた

「泣いたのか?」

「え?」

なぜ、わかったのだ?

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