クール王子
もうすぐ日が暮れる。
辺りがだんだんと暗くなってきた頃
ようやくセシルは歩き出した。
城を出てもう随分と時間がたつ。
レジスは怒っているだろうか…
今からでも戻って
謝ったほうが…
そう考えるも城を無断で出た手前、帰るに帰れない。
それにもしかしたら
レジスには私が居なくなって好都合なのかもしれない…。
……レジスには側室がいるのだから。
そう、レジスの事を考えるたびに涙が頬を伝う。
そしてふと俯いていた顔を何気無く持ち上げた。
すると――
そこには少し小さなバラ園があった。
こんな町から離れた場所にどうしてバラ園などあるのだろう、と辺りを見渡すと
少し離れた所にお屋敷が見えた。
このバラ園はあのお屋敷の主の敷地なのかもしれない。
綺麗に手入れもされているし…。
セシルはその場にしゃがみこむとバラに優しく触れた。