Othello―オセロゲーム―Game
全身の汗が引くとは、このことをいぅのだな…

半ば関心しながら、さすがの若松も寒気がした。
彼らの目先に広がったのは、深々と削れた巨大な谷間と、そこを繋ぐ唯一のつり橋であった。

「まさか…ここを渡らないと“紅葉館”着けないとか、そういうパターンですか?」
カヤの震えた声が横で聞こえた。

若松は、つり橋の先を眺めた。目を細めて見ると、何やら黒い影が…

「どうやら、そうらしいよ。」
冷静な若松の声に反応して、カヤが彼を見上げると、若松は何やら指を前に突き出している。
彼の指が差す方角をみると、木の看板に何やら文字が…

「…こう…よう…かん…。ッ!!“紅葉館”だ!!」
カヤは若松の顔を恐る恐る見上げた。
「渡んなきゃ…ですよね?」
「恐いんなら渡んなくてそのまま帰ってみたら?最も…君があの帰り道を一人で行けるとは思えないケドね。」


そう言い放つと、若松はズンズンと橋を渡って行った。


女の方がよっぽど恐ろしいって…。
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