命のひきかえに(臓器移植編)(超短編小説)
臓器を下さい
命のひきかえに(臓器移植編)
テーマ:小説
●ロサンゼルス。病院。

病室のドアには、「Yosio Ohkuro(大黒義雄)」と明記されている。ベッドの上では、チューブにつながれた義雄(2)が、仰向けで寝ている。腎臓・肝臓・小腸等に先天的な疾患がある。危篤状態だ。

看護師である母敏子が、悲観に暮れ、「ご免ね、ご免ね…」とただひたすら謝って泣き伏せている。義雄には、もう未来はないようだ。

テレビからは、日本人のある児童が、サンフランシスコで移植するためにやってくることが放送されていた。

敏子「お母さん、絶対に希望を捨てないからね。ドナー(臓器提供者)はきっと現れるからね。信じるのよ…」

もう、待っていられない。敏子は、民間団体に頼らず、自分でドナー探しをすることを決意するのであった。
○ ○

成田空港。母沢渡陽子が、夫光彦と娘博恵(1)に別れを告げた。息子佑太(2)の心臓移植を実現するために、アメリカに向かうのであった。

全国から集められた善意の募金は、1億円以上も集められた。大切なお金だ。佑太を助けなければならない。移植が成功した時、佑太は日本国民に恩返しをしなければならない。

お金では返せないが、医者か科学者などになって、日本のために貢献してもらいたい。陽子は、そう決めた。
○    ○

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