恋するキモチ
俺は動けなかった。

みんな動けなかった。



この沈黙を破ったのは、松先だった。
松先は何も言わずに階段を下りて行き、俺の前を通り過ぎ、地面に叩きつけられた携帯を拾い、立ち去った。



なんだよ?
どうなってんだよ?



俺は
姿を消したかった。

見なくていいものを
見てしまったんだ。

見てはいけないものを
見てしまったんだ。



どうしたら…。


力が抜けて、俺はアパートの壁に背中をついた。

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