モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
そう、彼は激しい男尊女卑的な価値観をもつ、異常な自己愛の塊のような男なのだ。
自分は特別で、優れていなければならない人間であり、失敗は許されない。
張りぼてのように上辺だけでも完璧に生きてきた彼の、中身にある黒い部分を見てしまった妻を、女の分際で自分の会社を簡単に立て直してしまえるような妻を、受け入れる訳にはいかないのだ。
裕子を認めてしまうことは、彼が自分の弱さを受け入れることになってしまうから。
倉澤は、妻の存在によって、歪んだ自尊心を大きく傷つけられたのだ。