硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
「説明するよ」


【…すぐに納得したってこと?…
私は、貴方の事が気になる…七海 龍星…】

私は、恥ずかしげを忘れて、口に出してしまいそうだった。


彼は、指し示しながら、私に説明した。

「エレベーターを背に、今いるエントランスを挟んで、右がクラブ。左がホストクラブ。」

私は、彼の指し示す方を見ながら、彼の説明を聞く。
何もかもが、初めての言葉だった。

「各々クラブの横、えー、エレベーターの両隣は各々、クラブの従業員の休憩&更衣控え室。ま、溜り場っていうか遊び場になってるけどね、ホストの部屋の方は」

私は、聞きながら頷いた。

「そして、俺の事務所は、こっちにある」

そう言って、ホストクラブ側の控え室を指した。

「この部屋の一角を、俺の部屋にした。さて、何故でしょうか?」

「え?」

私は、質問をされるとは思っていなかったので、目を丸くした。

「何故でしょうか?」

彼は、もう一度言った。

「理由が、あるの?」

「ある」

彼は、人指し指を私の前に突き出して、私を覗き込んで言った。

【わかるわけないよ。今日、初めて来たのに。…別に、何処でもいいと思うけど…】

私は、そんなことを思いながら答えた。

「…さぁ」

「わからない?」

「うん」

「そっか」

私は、頷く。

「で、この階は、」

「え?答えは?教えてくれないの?」

彼が、淡々と違う話を始めたので、私は、思わず尋ねた。

「あぁ」

「あぁって…」

「聞きたい?」

「そんなに引っ張るの?」

「まぁね」

彼は、ほくそ笑んだ。

「俺の部屋、エレベーターを背に、どっちにある?右?左?」

私は、エレベーターを背にして、指し示して答えた。

「左」

「そう。俺が、左曲がりだから」

「左曲がり?」

「そう」

「何?」

答えを聞いた私の、ピンときていない表情に、彼が笑った。

「なーに?」

「膨れた顔も、いいねぇ」

膨れ面の私を茶化す。

「そのうちわかる」

「え?」

「俺の傍にいれば、わかるよ」

さらっと言った彼の言葉に、私は、赤面した。

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