正反対恋愛【完結】
「翔太今彼女いないし、頑張れよ」


そう言うと、銀はジャージをギュッと右手で握りしめあたしの横を通り過ぎた。


そして、化学室の出口で一度ピタリと立ち止まり振り返ることなくこう言った。


「佐奈、すげぇ可愛くなった」


銀はそれだけ言うと化学室から出て行った。




「銀……誤解だよ。あたしが好きなのは……銀だよ?」


銀の為にお洒落しようと思ったの。


可愛くなりたいって思ったの。


全部全部銀の為なの。


翔太君の為じゃない。


あたしは……


大好きな銀の為に頑張ったんだよ?



「佐奈、すげぇ可愛くなった」


そう言われて嬉しくて仕方ないのに。


そう言われたいと望んでいたのに。


でもね、なんだか素直に喜べないよ。


「……銀……」


あたしはヘナヘナと力なくその場に座り込み頭を抱えた。
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