カップラーメンと君と俺
あえて教室の前のドアから入る。

顔をよく見るためだ。

入り口でしばらく立って、教室中を見回した。ゆっくり丁寧に一人一人の顔を確認する。

「お前見すぎだよ。」

と、後ろで佐助の声がした。
ハッとわれに返って、あわてて自分の席に着いた。俺の前の席の佐助が後ろを向いて、

「一日かけて、ゆっくりこっそり見ろよ。そんなあからさまに見てたら、クラスの女子がみんな利一ラブになっちゃうだろ?」

と言った。ニヤリと笑った顔がなんだかいやらしくて、俺はカバンで佐助を殴っといた。




俺は今、最高に怪しいやつだと思う。
授業中にもチラチラ女子を観察。休み時間にもチラチラ観察。

全員を一列に並べて、順番に確認したいくらいだ!
なんで女子は休み時間のたびにいなくなるんだ!
顔を隠してクスクス笑っていたり!目が合うと顔を背けたり!

イライラする!!!


でもイライラの一番の原因は、スーパーの女が見つからないこと。

佐助が用意してくれた座席表からすると、俺はすでにクラスの女子全員の顔と名前を確認したことになる。

こんだけ頑張ったのに、見つけられなかった。
俺の挙動不振っぷりは、すでにクラス中に知れ渡っており、男子の何人かが俺をからかい、普段口もきかない女子のクラス委員が、

「どうしたの?」

と声をかけてくるほどだった。
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