カップラーメンと君と俺
土曜日。

部活が終わり、俺はいつものように、いつものスーパーへ。

なぜかドキドキする。

スーパーの入り口で、自動ドアに写った自分を見た。おかしなところはないかな…少し髪を整え、よし!


いつも、どういう風にかごを持っていたっけ?どのルートでカップ麺売り場に行っていたっけ?


どうでもいいことが気になる。

ぎくしゃくする…

なんだか、俺、変だ。


「こんにちは!」

突然後ろから声をかけられた。びくっとして振り返ると、スーパーの女が立っていた。
今日は、髪が後ろで一つにまとめられていて、団子になっている。

俺は、とっさに声が出ず、こくりとうなずくことしか出来なかった。

「今日は、新商品が入っていないの。なるべく仕入れてくれるように頼んでいるんだけど…。毎日じゃあ、飽きるでしょう?」

こくり……俺はうなずいた。

「いつも、わたしが薦めたやつを食べてくれてて、なんだかうれしかった。気に入ってくれてるんだなぁって。」

スーパーの女は恥ずかしそうに笑った。俺はまたうなずいた。
俺の声帯はどうしちゃったんだろう…のどに何かが引っかかったように、一切声が出なかった。

「これ、結構売れてるんだけど……。」

スーパーの女はあれやこれや見せてくれて、そのたびに俺はただうなずいた。

バカみたいにうなずくことしか出来なかった。

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