続きは、社長室で。2
拓海のブラウンの瞳は、一目見た女性さえ虜にするほどの効力を備えている。
特別に向けられた眼差しではナイと分かりながらも…、愛おしさが募りゆく。
視線を泳がすコトも出来なければ、視線を外すコトなど到底ムリな話なの…。
「何だろうな、これ…」
「…っ」
息苦しささえ覚えるキョリ感と、ふっとかかる息遣いに絆されてしまい。
私の心臓は、ドキドキと響きそうなほど最高潮に高ぶっていく…。
何かを思い出してくれた…?浅薄でしかナイ淡い期待さえ抱きつつ・・・
そんな私の留め金を外そうとするのも、破壊するコトが出来るのも。
すべてが拓海だけであって、貴方の所作ひとつで容易いモノなの…――
「佐々木さん、俺の…」
拓海が話し掛けてきたトキ、タイミング良く到着音とともに扉がスーッと開いて。
「お2人さん、着いたよー?」
「あぁ、そうだな」
密室空間から脱出していた桜井さんの呼びかけに応じて、スッと離れた拓海。
「っ、すみません…」
未だドキドキと囃し立てる心臓を制すように、胸に手を置いて返事をしながら。
先ほどのせいか、上手く力の入らない足をムリヤリ動かして箱型を退出した。