続きは、社長室で。2



私はやはり、お値段のコトだけが浮かんでしまうの…。




「意味というのはね・・・

古くから東条には、値段の付けられない品が多くあったの。

だけれど、その物の価値に慄く者に人の統制など出来ないでしょう?

そこで作られたとされる言葉があってね…。

“物を恐れる者は、人をも恐れて破滅する”」



「物を恐れる者・・・」


ポツリとフレーズを発した私に、慈悲深い表情で頷いてくれた。




「かくいう私も、普通の家庭に育ったから…。

正直言って、調度品や高級品に囲まれる生活は大変だったわ。

でもそれは、周りに負けてしまう事と同然だと気づけたのよ。

物や人に囚われずに己を信じろって、ご先祖様からのメッセージに思えたの。

私も東条に嫁いだ者として、凛としなければ…ってね?」


「奥様・・・」


ゆっくりと紡がれた言葉が重くて、とても胸にズシッと響いてきた。




きっと想像以上に辛い目に遭ったのだと、言葉の節々から伝わってくる。



それでも旦那様を支えてきたという自信が、奥様を輝かせている気がして。




昨日の自分の行動が、ひどく軽率だったと思い知らされた・・・




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