続きは、社長室で。2



何かが始まる前に、逃げ出したのだから・・・




「確かに“しきたり”は、山ほどあるけれど。

こうして考えれば、理にかなった素敵な物ばかりなの。

拓海と一緒に、東条をよろしくお願いね…」


「奥様・・・」


どこまでも深い海のような優しい言葉に、胸がギューッと締めつけられた。



「あっ、奥様は止めて頂戴ね。

お義母様なんて嫌だし…、理紗子(リサコ)って呼んでね?」


「え…、でも・・・」


「東条と佐々木の時代は、もう終わりにしたいのよ…。

いつまでも時代に囚われるのも、私はダメだと思うの。

“温故知新”をモットーに、これから頑張りましょうね?」


「っ、はい、…理紗子さん」


おずおずと、遠慮がちに奥様の名前を呼んでしまったけれど。



「蘭ちゃん、本当にありがとう」


「っ…、うっ・・・」


泣いてしまった私の頭を撫でると、ハンカチで涙を拭ってくれる奥様。



自分の弱さを理由に逃げ出した事が、恥ずかしくて仕方が無かった。




半日会ってイナイだけなのに、拓海に会いたくて堪らない・・・




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