【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙④〜
さて、この文箱を綴じた紐の結び目に、一房、藤の造花の添えられている様などは、かの朝露にも、ただの御乳母殿へのご挨拶とはとても思えぬままに、遣わされました先のお屋敷も、流石に左大臣邸には見劣りますものの、朝露には、やはりご立派な屋敷に見えて、

(このような屋敷に住まわれるお方を乳母にもつとは、左若君とは、なんと、雲の上高くいらっしゃるお方なのだろう)

と、このように思われて、自然と、ため息がこぼれるのでした。
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