【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙④〜
「我が主も、お方様のご様子をたいへん気にかけておいでです。只今は、若君方もお揃いにて、こちらの近くに参っておりますので、万事ご都合よろしければ、こちらへもご挨拶にお伺いしたいとの由、申しつかりましてございます」

このように朝露が申しますのを、若者は、
「これはまた、突然のお申し出のこととて、大したお持て成しもできず、お恥ずかしいかぎりではございますが、西の方様は若君方にとりましては大事な御乳母にございますれば、お懐かしく思し召されるも必定」

とお答えになるのでした。

「西の方様には私がお取り次ぎ申し上げましょう。お使者殿には、若君方には、お越しをお待ちいたしております由、お伝え願いたい」
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