夢の、現実
全ての、始まり
 「皆さん、勉強お疲れ様でした!」

そうにこやかに笑う担任は言う。

「やっと終わった…」

溜め息と共に、久遠遥はゆっくりと背伸びをした。



遥の通う高校は受験生を対象に、夏休みに応募性の学力向上合宿「リュケイオン」を開いていた。

今やっと合宿一日目のスケジュールが終り、夜の会が始まったところ。

まだ一日目だというのに、疲れが激しい。

「最悪だった…」
虚ろな目をして、机に俯せになっているのは親友の山岡綾女だ。

「だ、大丈夫…?」

遥の言葉に反応するや否や、視線を鋭くして

「あんな鬼教師…本宮め…。遥だって苦手でしょう?」

と、口をとがらせた。

本宮こと本宮康也は遥達の物理の先生だ。
雪のように白い肌に鋭い目。
合理的かつ論理的な先生で、見掛けによらず合気道部の顧問であり学校の不良を一掃したという実力もある。
まだ30代だし、若く生徒思いの先生だが、

「流石に、性格がね…」

有り得ない程に、鬼畜なのだ。

「いい先生なんだけど怖いよねー」

「…貴女達、聞いてるんですか?」

気付いたら、担任が目の前で怖い顔をしていた。
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