今日から執事
「それより、今日は何のパーティーなんでしょう?」
早稀のバックを持ち、半歩後ろを歩きながら言う。
その足はパーティー会場へと運ばれている。
その身は先刻買ったスーツを纏っていて、無駄に似合っている。
一方早稀はというと、淡い紫のドレスを着ていて胸元は大きく開いている。
それを目にした男共が横目でちらちら見てくるのは当たり前。
真斗は目に付いた男共を片っ端から睨みつけて、寄せ付けない努力をしていた。
「言ってなかったかしら。今日は兄様の婚約パーティーよ」
「涼弥様の、ですか」
視線をもろともせず、早稀は普段通りに話す。
涼弥様とは早稀の兄であり、樫原財閥の跡取りでもあるお方だ。
屋敷に来てから、挨拶以外は一度も話した事が無い真斗だが、なるほど納得できる。
ここ数日、涼弥様が屋敷からよく出掛けていたのはこのパーティーの為だったのだ。