今日から執事


「真斗!約束を果たす時よっ」


まだ完全に覚醒していない真斗の手を取り、ぶんぶん上下に振りながら言う。


「約束とは…」


なんだ?
と問おうとしたが、はたと思い当たる節があることに気がついた。


あれだ。
早綺と出会って直ぐのこと。早綺に普通の女子高生の生活を体験させてやる、という約束だ。


あれから約一ヶ月近く経つが、早綺の言うとおり約束を果たす機会が無く、このままおじゃんになるのかと気になっていた事柄であった。

最も、真斗にとっては有っても無くてもさほど大差はないが。


「今日思い出したの!約束!
だから明日行くわよ」

「明日?」


それは無理ってものだ。
早綺と替わって明日は真斗が学校に行かなければいけない日であった。

いわゆる、登校日である。


その旨を伝えたら、あからさまに嫌な顔をされたが、流石に早綺も学生の身だ。
簡単に納得してくれた。


「じゃあ明後日にしましょう。
目的地は真斗が決めて?私をエスコートしてね」


新崎昴のことで悩んでいた時のしおらしさは片鱗も見せず、飄々と意見を述べる。

果たして早綺の物言いは意見とよべるものかと真斗が自分に訊くと、否で、じゃあ何だと問われれば答える術を持っていない。

強いて言えば、お嬢様のお願い、と言った所だろうか。

もっとも、そのお願いはお嬢様の物差しで計ったものなので、ごくごく普通の一般人はどう思うか知れたものじゃないが。


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