Sin
すっ、と。

店主はシンの手から1リアを受け取った。顔を上げたシンとは目を合わさず、ふんと鼻で息をつく。

受け取って、もらえた。

怒鳴られるか殴られる事を覚悟していたシンは、何も言わずにいる店主に心底ほっとした。そのせいか、くらりと足元がよろめく。

「あの、僕、これで。また来月、来ます」

林檎を幾つ盗んだかは覚えていない。ただ、店主が許してくれるまでお金を払おうとシンは決めていた。

震える指を握りしめ、店を出る。

出来た。ちゃんと出来た!

自信に似た喜びを胸の辺りで感じて数歩歩いた、その時。

「おい」

突然店主の低い声に呼び止められ、シンはびっくりして飛び上がった。


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