Sin
《Chapter 1
  小さな獣と独りの大人》



「この悪ガキ! 今日という今日は逃がさないぞ!」

林檎の花をふわりと揺らす風が穏やかな、ある春の日の事。

仕事帰りのジャック・ウェイドがいつものように角を曲がると、商店街の中程にある八百屋の前で、店主が小さな少年の首根っこを捕まえて怒鳴っていた。

「どれだけ盗めば気が済むんだ! え? この浮浪児め!」

どうやら万引きらしい。ジャックは様子を伺いながら歩を進める。

柄の長いほうきで叩かれている少年の懐から赤い林檎が二つ落ち、ころころと道を転がった。

少年は逃げようとして暴れ、店主の腕に噛み付く。かなり痛かったらしく、店主は少年を乱暴に振り払った。

「く、この……!」

背中をしたたか打ちながらも、行動の自由を得た少年はすかさず林檎に手を伸ばす。

その小さな手を思い切り踏み付ける店主の大きな足。

「逃がすものか。今日こそ警察に突き出してやる」

店主は怒りを込めて片足に全体重をかけ、少年は痛みに呻いた。

「あの」


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