Sin
通り二つ向こうにある街路樹から小さな鳥が飛び立った。その振動を受けてか、ひらひらと葉が舞い落ちる。

その木の下に通りかかった人の姿を見た瞬間、シンの細い腕から紙袋が滑り落ちた。

コロコロと足元に転がる、潰れた林檎や玉ねぎ。

「か……さん……?」

緩く編んださらさらの金髪。整った横顔。

『シン』

鼓動は速度を増し、体の芯が震える。

忘れもしない。会いたくてたまらなかった母親の姿。

『大好きよ、シン』

隣町に居るはずの母さんが、どうしてこの街に?

シンはゆら、と一歩踏み出した。もしかして母さん、本当に俺の事探してくれてた……?

『商店街から先へは、シン一人で外出しては駄目だよ』

ジャックの声が頭の片隅に鳴り響く。

だけど。

「母さん……!!」

気づいたら駆け出していた。止められなかった。商店街を飛び出したシンは母親とおぼしき女の人の後を追った。

きっとジャックに叱られる。でも、それでもよかった。叩かれても構わない。

母さんに、会いたい。


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