Sin
「もしかしてリンチにでもあったのか?」

リンチ……? シンは首を傾げる。ずき、と傷が痛む。

「一体、どうしてあんな所に行ったんだ?」

俺、母さんを見つけて追いかけたはず。そして……そして母さんは……。

シンは母親の歪んだ笑顔を思い出した。我が子の首を絞めながら笑っていた母親の姿。喉に食い込む指。

不意に恐怖が蘇る。怖い。俺、母さんに殺される。

「あ……ああ、あ」

目に焼き付いて離れない恐ろしい笑みに怯えたシンは頭を抱えて起き上がろうとした。

逃げなきゃ殺される。早く、早くジャックの家に帰らなきゃ……!

よろめくシンを八百屋が支えた時、チャイムがなり。

「夜分遅くすみません! シンを見ませんでしたか?」

ジャックの、声。今のシンが唯一、辛うじて信じられる人。

ジャック、来てくれた。ジャック、俺の事探してくれてた……。

シンは体の痛みを忘れて立ち上がった。足を引きずりながら入口へ向かう。


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