Sin
「あ、あの子が悪いのよ! あの子があたしの幸せをみんな奪うから、だから」

「じゃああの子の幸せを奪ったのは誰だ? 自分じゃないとでも言うつもりか?」

ぐ、と強い力で腕を掴まれ、母親は小さな悲鳴をあげる。点滅している光がジャックの冷たい笑みを不気味に照らし出した。

「あんたにどんな事情があろうとどんな言い分があろうと、あんたがあの子にした事は許される事じゃない」

ぎりぎりと腕を掴む手に力が篭る。母親は痛みに顔を歪めた。

「あんたを一人にしないためにあの子は残酷な虐めに耐えた。あんたが棄てたせいであの子は身体的にも性的にも虐待された」

「あっ……」

「あんたが……あんたが死ねと言ったから、だからあの子は死のうとしたんだ! それを今更……!!」

「痛っ……!」

バチ、と音がして街灯が消えた。骨が折れる寸前で力を緩め、ジャックは静かに問う。

「あの子が耐えてきた痛みはこんな程度の物じゃない。……分かるか?」

母親は怯えた瞳でジャックを見上げる。怒りと憎しみの篭った目。

「自分は“親”だと言い張るなら、その信じている“親”に痛め付けられる子どもの気持ちが分かるか? 傷だらけになっても愛されたいと願い続け、その願いすら踏み付けられて立ち上がれなくなる苦しさが本当の意味で分かってるのか?」


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