Sin
やりきれない思いを街路樹に叩き付け、ジャックはアパートの階段を上った。
母親のした事は許せない。でも気持ちは理解出来る。でも許せない。終わりの無いループのようにぐるぐると同じ結論を繰り返す。
胸を掻き乱す“なぜ?”の問い。その黒い渦に答えは存在するのか。
シンはどうしているだろう。深く息をつき、ジャックは静かに扉を開けた。
シンはソファーに横になり、震えていた。額に手を触れるとかなりの熱。
「シン」
声を掛けたが返事は無い。ジャックは氷嚢を作り、部屋を暖めた。
傷を負った上にあの雨にずっと打たれていたのだ。肺炎にならなければ良いが。
『俺を診てくれる病院があると思うか?』
理不尽な現実。悔しさに表情を歪ませながらジャックはシンの顔をタオルでそっと拭いた。
シンは時々、何か話すように口を動かす。声にならないので何を言いたいのか、何を言っているのかは分からない。
悪夢を見ていなければ良いと願い、ジャックは一晩中そばで看病した。