Sin
「その紙にメッセージ書いてくれたら、私が刺繍してあげる」

先にハンカチを選んでねと言ってお姉さんは沢山ハンカチを並べてくれた。

シンはジャックの姿を思い浮かべながら一枚一枚じっくり眺める。

一枚は深い緑色のハンカチにした。シンプルだけど四隅に黄色のアクセントがあって、それがジャックらしいかなと思って。

もう一枚、と選び始めた時、ふとジャックの言葉を思い出した。

『シン、珍しい髪の色してる。銀色がかった黒。綺麗だな』

シンは自分の髪の色に似ているチャコールグレーのハンカチを選び、お姉さんに渡した。

「こっちのハンカチにさ、メッセージ入れたいな」

「お安いご用。じゃあメッセージ書いてね」

うーんと悩んで悩んで。シンは一番伝えたい言葉を二つ書いた。

「ちょっと時間かかるから、八百屋さんとこで遊んでたらいいわよ」

うん、と頷いてシンは八百屋に向かった。もう空はオレンジ色に変わり始めている。

明日で、一年。ジャックと出会った日。

明日こそ、言ってみよう。憎まれ口でごまかさないで。

沈んでいく眩しい夕陽に目を細め、シンは誓うように呟いた。


……すれ違った人影が、彼の幸せそうな笑顔を見て不自然に足を止めた事に気づかずに。


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