Sin
『消えてもらう』
『死ねばいいのに』

男の声に母親の言葉が交じり、耳元でこだまする。

「あ、はは……」

シンはなんとかアパートの入口までたどり着いた。階段に手をかけた所で動けなくなる。

「俺……やっぱり“要らない子”だったんだな……」

シンはくすくす笑った。なぜだか可笑しくてたまらなかった。母親に手をかけられた、あの時と同じように。

「はは、俺、バカだな……」

ジャックと居たら信じたくなったんだ。自分は要らない子じゃないんだって。

だけど、やっぱり。やっぱり俺、この世界に要らない、子、だった……。

気が遠くなりはじめ、シンは意識を手放すまいと階段の横にある鉄柵を強く握った。

『シン』

思い出すのはジャックの笑顔。優しい声。

『シン、ありがとう』

ぎゅっと拳に力を篭める。

――お願いです……!

シンは心の中で叫んだ。

――お願いです。

ジャックにありがとうと言うまでで良いから、

俺に時間をください――


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