Sin
「え……?」

幼い子どもが父親にするように、シンはジャックの頬にキスする。

そしてもう一度、耳元で一文字ずつゆっくり言葉を声に変えた。

「すぅ、き。あぃ、あ、ろ」

ジャックの首につかまっていた腕をするりと緩め、シンはぱたりとベッドに倒れ込んだ。一仕事終えたような、満足そうな表情。

「シン……?」

予想外の出来事で放心気味になっているジャックに、シンはパジャマのポケットから取り出した四つ折の紙を手渡した。

ジャックは震える手で受け取り、恐る恐る開く。読み進めるうちに涙が溢れてきて字が見えなくなった。

リン、と部屋に響くベルの音。

ジャックが涙を拭ってシンを見ると、彼の手はタイプライターで打ったばかりの文字を指していた。

『ったく、ジャックってば相変わらず泣き虫だな』

上手く動かない口元の代わりに、大きな灰色の瞳が悪戯っぽく笑っていた。


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