Sin
近づく距離と抱える“傷”
《Chapter 4
  近づく距離と抱える“傷”》



「で、あんた何の仕事してんだ?」

シンはサラダのトマトをぱくりと口に運ぶ。

「“あんた”じゃなくて名前で呼んでくれないかな」

ジャックはスープのおかわりをシンの前に置き、苦笑いした。




シンとジャックが“取引”をしてから二週間程。二人はお互いの“日課”に慣れはじめた。

朝一緒に食事をしてジャックは仕事へ、シンは風呂と睡眠。

ジャックの帰宅後、夕食を一緒に食べてシンはソファーからジャックを観察、ジャックはいつも通りの予定をこなす。

次第に攻撃的な態度が和らぎ始めたものの、シンは絶対に自分の事を話そうとしなかった。

ジャックがそれとなく尋ねても『知らない』『関係ない』『どうでもいい』としか答えず、尋ね続けると『しつこい』と言って不機嫌になる。


二週間じっくりと観察した結果ジャックの事を“とりあえず安全な人”と認めたのだろう。シンはジャックについて少しずつ尋ねてくるようになった。

何の仕事をしているのか、幾つなのか、恋人はいるのか。何色が好きかまで。

でも何より一番しつこくシンが尋ねたのは、『どうして俺と一緒に住んでるのか』だった。


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