Sin
正直に言うと、ジャックにもどうしてなのか分からない。

なぜ、僕はあの時シンに手を差し延べたのだろう。

見えそうで見えない、ぼやけた視界の向こうにある答え。知りたいような、知りたくないような。

「……理由がなきゃ駄目なのかい?」

ジャックが微笑みながらそう答えるたび、シンはしかめっつらをして呟いた。

「変人」




壁に掛かっているカレンダーが一枚新しくなる頃、ジャックの質問に対するシンの返事が『関係ない』『どうでもいい』から『言いたくない』『思い出したくない』に変わりはじめた。

少しずつでも自分の気持ちを口にしてくれるようになったシンの変化が嬉しくて。

独りの時には感じなかった、早く家に帰りたいという気持ち。

ジャックはいつの間にか、仕事を終えて家に帰るのが楽しみになっていた。


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