Sin
「まず手を洗っておいで。食事が出来るまでその辺で休んでなさい」

商店街を抜けて少し先を左に曲がった所にあるワンルームのアパート。

細長い部屋に置かれたロフトベッドの下にはソファーと小さい本棚。入口のすぐ横にはキッチンがある。風呂とトイレは一番奥の扉。

苦虫を潰したような顔をした少年はジャックに言われた通り手を洗い、ソファーの隅に縮こまった。

置物のようにぴくりとも動かないが、灰色の瞳だけはギョロギョロと辺りを見回している。

常に攻撃態勢を整えている幼い獣。

ジャックは簡単な料理を作りながら彼を観察した。

まず、服が必要か。風呂に入れて髪を切って。

いや、その前に信頼してもらうのが先か。

ふと、目が合う。刃物の様に鋭利な目付きで睨む少年に、にこりと笑みを返す。

フライパンに玉子を割り入れながら、どうして自分は少年を連れて来たのだろうとジャックは自問した。


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