Sin
獣の牙のように食い込む歯。ジャックは一瞬少年を振り払いかけた。

そうしなかったのは、少年の瞳に恐怖の色を認めたからだ。

――この子は、ただ怖いだけなんだ。

ぎり、と力が強くなる。怯えているがゆえに攻撃する小さな獣の攻撃を、ジャックは冷静に受け止めた。

「……気が済んだか?」

恐る恐るジャックを見上げる少年に彼は微笑む。本当はかなり痛い。

「気が済むまで試せば良い。受けて立つぞ」

少年はジャックを睨んでいたが、しばらくして噛むのを止めた。

「さ、おいで。僕もたまには誰かと食事をしたい。いつも一人だからな」

少年は不信な目をジャックに向けながらも空腹に耐えられなかったのだろう、家に向かう彼の後についてきた。


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