Sin
両手両足をロープで縛られ、砂利道の上を乱暴に引きずり回される。
土中に首まで埋められ、上から何度も汚水をかけられる。
体を木の柵に括られ、石投げの的にされる。
『ルージャの子は生きてる事自体が罪』
その歪んだ考えを素直に信じた少年達の虐めは、日に日に残酷になっていった。
ある日、鏡に映った傷と痣だらけの自分を見つめていたシンは無表情で呟いた。
「死にたい」
もう耐えられない。ふと気づけばナイフを握っていた。家にはシン一人。母親は居ない。
手が震える。胸を刺せば死ねる。一突き、すれば……。
その時、不意に目に映ったのは赤い林檎。最近ほとんど家に居ない母親が買ってくれた、留守番のご褒美。
グサリ、と。ナイフはシンの胸にではなく床板に突き刺さった。涙が溢れて止まらない。
死ねない。母さんが泣くから、死ねない。母さんを悲しませるから、死ねない。
「おい、ルージャのくずを連れて来い」
母さんのために、我慢するんだ。寂しいと毎晩泣いてる母さんを一人にしないために、ぼくは生きてなきゃいけない。
「薄汚い移民め! 思い知れ!」
シンは母親のため、偏見に根付く残酷な虐めに耐え続けた。