世界の説明書
そうこうしている内に町から人々が集まってきた。おや、思った時に、その人ごみの中に、あの目の見えない子がいた。横にはこの前もいた、父親らしき人が落ち着かなさそうに辺りを眺めていた。黒い肩のあいたドレスを着ている彼女は、周りの景色から少し浮いて、際立て見えた。僕は、黒く長い彼女の髪に触れてみたくなったが、すぐに駄目だと思い直す。彼女を守りたいと初めて見た時からずっと、思っていた。彼女に何か危険が迫っているからとかではない理由。それはもはや本能だった。おぼつかなく杖をせわしなく左右に振るか細い腕、俯き加減のちいさな顎。空の雲より白い透明な肌。それら全てがコンクリートから咲くタンポポのように、切なく、いとおしかった。僕が昔、光りを奪ってしまった女の子は今頃どうしているだろう。彼女のように、杖を突いているだろうか、まだ、生きているのだろうか。僕のせいで困っていないか。様々な想像が、今、目の前にいる少女を守れと命令してくる。僕が彼女の目になってあげよう。彼女の為に道を開いていこうと。