世界の説明書
人間の夢なんて、こんな物だ。自分の理想が本当に自分のしたい事なのか、自分にとって幸せな事なのかは、理想にすら分からない。理想を掲げた人間にすら分からない時だってある。二郎はいらいらするとたまにこうやって独自の話を作り、くだらない人々の理想を潰していた。テレビ、ラジオから聞こえてくる人々の夢、希望、理想、思想、詩宗、まやかし、ジンクス、占い、奇麗事、戯言、噂、嘘、、そういった物を全てぶち壊したかった。心の中に、もう一人の人間を作り、否定し、抹殺する。二郎はいつでも強者であり、支配者であった。二郎が物語を声に出した時、僕は自分に話しかけられているのかと思い、一瞬体をびくつかせ、二郎の方に見入った。すると、別に彼が自分に話しかけているのではない事に気づき、やっぱり、彼は変わっているなと、思った。家の中でも相変わらず黒いパーカーを着ている二郎に、服を着替えるという習慣、風呂に入るという習慣は無かった。たまに体が痒くなると、水で流す事ぐらいはしたが、体、歯も含め全ては生まれた時からのままで、そのハッスル臭いが今までの自分の歴史を物語っていた。二郎は持ち帰った蛾の死骸から羽だけ剥きとり、それに付着しているリンプンを集めては小さなビンの中に貯めていった。