世界の説明書
 それから、彼は公園で色々な植物、動物を採ってきては、乾燥させたり、煮たり、焼いたり、最終的に粉末にして、それぞれ個別のビンに分けて入れていた。そして、またあの昔扇風機で殺した老婆のテントに、老婆の皮膚の細胞でも貰おうと遊びに行ったが、テントはすでになくなっており、腰抜けの息子も消えていた。とりあえず、例の物を公衆トイレに仕掛けに行った。僕は二郎が何故それらを集めていたのか分からなかったが、どれも吐き気を催すような、臭いだったり、見た事も無いグロテスクな昆虫が何かの動物の血液に漬け込まれていたりと、全てが僕の心を傷つけた。
最初は孤独で一人の二郎が、自分の境遇と被って見えたが、次第に僕は二郎の事を嫌悪するようになっていた。二郎の近隣住民に対するくだらない嫌がらせや、堕落しきった生活を間近で見ていると、怒りすら神々しいものになってくる。この男は腐っている。誰とも一日中ずっと口も聞かないで、ただ人々が嫌がることをする人間だと、僕は二郎の事を分析した。こんな人間もいるのだなと、母の昔の言葉を思い出す。こんな人間いなければいいのに。きっとこんな人間が自分の父親を殺したのだろうと思うと、いてもたってもいられなくなってきた。こんな人間の為に、母も、自分も、ご先祖様も苦労し、孤独を余儀なくされたと思うと、二郎を殺したくなってきた。僕が人を殺したくなったのは、これが初めてだった。
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