世界の説明書
 すると青年は口を耳まで裂いてにやけだしだ。急にその体に魂が宿ったかのように、小走りに茂みに駆け込んできた。トンネルまでの道は泥がぬめっていて滑りやすくなっていた。彼は慎重に一歩ずつ辺りを見回しながら近づいてきた。跳ねる泥を物ともせず、暗い泥沼の中をまっすぐに世界の終焉の始まりの様なトンネルに吸い込まれていった。『パンデモニウム』トンネルの中は異様なほど静まり返っていた。時々、このトンネルよりさらに地下にある新しい地下鉄の通過する怒号が、子供の悲鳴のように小さく地中から響いてきた。しかし、それも地下鉄が通り過ぎると、再び暗黒の無音が空間を支配した。この世界でこれほど静かな場所は無いと思えるほど、このトンネルの中は寂しく、生命の気配がしなかった。埃と、ゴミと、動物の排泄物が一つにまとまり灰色のコンクリートにさらに退廃とした文明の終わりを上塗りしていた。
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