世界の説明書
 二郎がトンネル内に入っていくと、最初は暗闇で何も見えなかったが、徐々に目が慣れ始めると、トンネルが思いのほか巨大である事に気づいた。いくら目を凝らしてもトンネルの終わりは見えない。高さ約二十メートル、横幅も同じぐらい。周りには泥沼以外に何も無く、舗装されている道路からは深い茂みの為に、トンネルの入り口すら満足に見えない。トンネル内は漆黒の闇で、ここの住人以外の侵入者を拒んでいた。探検好きの子供達なら、自らをインディージョーンズに仕立て上げ、いき洋々と暗闇に入ってくるかも知れないが、普通に生活している成人がこんな所に何の用があって入ってくるのか想像すら出来ない。もし来るとすれば、人殺しが死体を隠すにくるか、自殺志願者が首を吊りに来るかだけだ。こんな場所がふと自分のテリトリーになったことに、二郎は運命的な何かを感じていた。セカイはやはり自分を必要としている、革命の為にセカイの理すら自分に見方しているのだと、自分の使命の自負を深めていた。さらにトンネルの奥へと進んでいくと、既に方向感覚は狂い、どちらが出口で、どちらが入り口なのかすら分からなくなってきた。入り口から射していた月の淡い光はすでに消えうせ、滞った空気が時間を止めていた。すると、二郎の左側五メートル程先で、何かがドラム缶を叩くような音がした。ち、先客か、確かにこんないい場所ほかにはない、と二郎は少々めんどうな事になったと思いながら、とりあえず音のした方向に歩いていった。
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