世界の説明書



「なんか話さないか。一人じゃないのだから。」

二郎が静かに話しかける。さっきまでとはまるで別人の話し方だった。落ち着いていて、声色まで違うようだった。しかし、彼は何も話さない。沈黙こそが鞭であり、答弁こそが安らぎとしっていたからだ。無関心から生まれる沈黙は鞭以上に彼の記憶を呼び覚ます。無関心な人々。すぐ傍で人が倒れているのに何もしない人々。少し服が汚いから、お金が無いから、顔がおかしいから、と人はあらゆる理由をつけて無関心を示す。100%の無関心を期待していても、嫌悪が付きまとう。


「一人で物思いにふけっていないで、少し話さないか。あんたも大分おかしな事になっているみたいだけど。俺とここにいると安心するんだろう。外に行けばきっと、警察に追い掛け回されるか、また同じように誰かを殺すか、もうあんたはゆっくりしていられる場所はここしかない。しかも、俺がいる。ここじゃあんたが強者で、俺が弱者。だから、あんたは落ち着くだろう。だから、話そうじゃないか。」

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