世界の説明書
 彼は自分はもう死ぬと決めていたのに、ここ以外に行く場所がない事が分ると、底知れぬ不安感を感じた。自分は何をしてきたのだろう。人に嫌われ、無視され、蹴られ、脅され、住む所を追われ、ゴミ屑を漁り、病気になり、全てを無くし、沢山人を殺して、今はここで必死に黙っている。こんな穴倉で黙っている事が唯一の攻撃方法。世界に向けて最後に出来た事、それが、空気の流れない穴倉で必死に黙っている事。なんと愚かで寂しい人生だったのだろう。今まで自分を律してきた怒りの感情が、憎しみの感情が無くなった瞬間、彼は罪悪感の電気椅子に座っていた。しかし、最後の仕事が残っている、こいつだけは、こいつだけ、許さない。
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