世界の説明書


「ううん、いいの、だって、パパはママの事を世界で一番大好きなんでしょ。だから私が生まれた。私は、ママでありパパでもあるんでしょ。私の体の中にはママも、パパもいる。パパは世界で一番強いよ。私の目が見えなくなっても、ママがあんな風になっても、パパは私を助けてくれている。世界がどんなひどい事を私達にしても、パパが全部受け止めてくれる。名子はそれを知ってる。勿論パパだって疲れるし、私みたいに泣いたりしたい時があると思う。そんなの当たり前だもん、悲しかったら、泣いて、楽しかったら笑う。それが私達だもの。我慢なんてずっと出来ないし、したって良いことない。パパが悲しい時は名子がパパを励ますよ。ああ、良かった、もう二度とパパが私の事を見てくれないのかとずっと、ずっと心配していたの。」
 名子は毎日聞こえていた正人の嗚咽については幼いながらに触れないようにしていた。そして、父親の持っていた優しい空気が、少しずつ宇宙中から正人に戻ってくるのを感じていた。正人は、思春期以降初めて泣きたいだけ、泣いた為に、高校生以来感じていなかった異常な空腹間に襲われた。
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