愛してよダーリン




いきなりデートのお誘いなんて、あんなに冷めてる樹がどうしちゃったんだろう。



けど、その謎はすぐに分かった。




『明後日から、3日間だけ向こうに行かなきゃならなくなった』


「え?」



だって試験は土曜日なんじゃ……。



『試験受ける前に向こうの学校の校長と話したり、親が向こうの環境に慣れとけって』


「……」


『だから、まだ引っ越さねぇけど向こうに行く前に奈緒といたいって思った』



樹は………ずるい。



明後日から1回、引っ越さないにしろ向こうに行っちゃうのに、


それを突然告白して、そしてデートに誘ってこんな嬉しいことを言ったりして……。



一緒にいたい、なんて言われたら『嫌だ』って言えなくなるじゃん。



何も………言えなくなるじゃん。



「ねぇ、樹」


『あ?』


「…好きだよ」


『あぁ』



好きだよって返されなくても、あたしは樹がちゃんと好きでいてくれてるって信じれる。



それはきっと、初めて感じた樹からの恋人としての優しさからかもしれない。



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