愛してよダーリン




あたしの家の前に着き、どちらともなく握っていた手を離した。



あたしは付き合えたことが嬉しくて、にやけるのを必死に我慢していた。



だけど、樹はそういう雰囲気じゃなくて……。




「樹?」



何か考えるような顔をして、あたしの顔を見ようとしてくれない。



「どうしたの?」



さっきまでの幸せな空気は……どこかに行ってしまったかのように、静かな空気が流れる。



え、何?

急にどうしたの?



樹の突然の変わりように、あたしは不安だけが増えていった。




これは良い雰囲気じゃない。



『バイバイのキスしようぜ』

『うん!する!』



なんてバカップルがするような雰囲気じゃない。



きっと………まだ話があるんだ。



樹にはまだあたしに話したいことがあるんだ。



それが良い話だったら、いくらだって眠れなくったって聞きたい。



けど、いくらバカなあたしでも良い話じゃないってことくらいは分かるから………




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