いばら姫





灰谷は
意識の無いアズを抱き
後部座席


―― 自分が眠らせたくせに
引っ切りなしに顔を覗き込んで
心配している


「…それで?
どこに行けばいいんだ? 」


『……赤坂の外堀通りに
アズの体の事、
よく判ってる医師が
開業医をしてるんだ

…梅川クリニック

道は案内するから、そこへ行って 』


「…アズの事知ってるって…

もしかして腹の傷を診た医者とかか…? 」


『…違うよ

アズと青山さんが会った頃
アズを診てくれてたお医者さん』


「……… 」





――― 銀行や、不動産屋のビル
デザインの凝ったパン屋

その脇道を入り
『赤坂銀座』のアーケードが見えると
灰谷は『…停めて!』と声をあげた



一度自分のコートを脱ぎ
アズを包むと
…絵になる動きで座席から抱え上げ
横抱きにして、道を進む


『…岡田さん、こっち
もう連絡はしてある』


「いつの間に…」

『…メル友だから
こないだまで医学部目指してて
色々教えて貰ってた

明示に行く事にしたけど」


「…かなりの方向転換だな…
法学部にでもしたの?」


『…明示に入れれば、何処でもいい』

「…どこでも…って 」


『…アズが明示の大学祭
見たいって言ったから、決めただけだし』


「………お前それは…
別に明示の学生じゃなくたって…」


『…他の奴が案内とかするの嫌だ 』


「………」





「――――遠矢くん!!!」








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