いばら姫



年始の挨拶

祝賀会


例年なら、じっちゃ
岡田会長の屋敷にも
大勢の地元有力者が訪れる

だが今年は
親父の後をついて
俺も仕事関係の家を、ひたすら廻った


去年の春先に
会長は少し、体を壊して入院した


田舎での仕事の繋がりは
規模がでかい小さいでは無く
個人との信頼関係で
成り立っている部分が多い


岡田がこれだけ大きくなり
様々な関連と繋がっているのは
会長の人柄による所だ


代が変わって
急激に衰えて行く会社があるのは
偏にそれで―――



厳格な父親に育てられたじっちゃは
その分俺の親父には
自由な育て方をして

見合いが当たり前だった流れの中で
恋愛結婚で、地元以外の嫁をとらせた


それをあまり良く思わない古参もいたし

岡田と繋がりが持てると
躍起になって娘を育てていた家を
無下に扱った結果なわけだから
その連中を一時期、敵に回したとも聞く


親父は地元のセオリーから外れた分

結婚してからは信頼を得る為、
仕事に没頭し
母親も同じく、家の事よりも
地元に溶け込む為に
出歩く事が多かった




――― 俺が遊び回っていたのは
有名な話だったけど


ハメを外して遊ぶのは
地元は避けていたし

経歴としては地域で一番有名な
有力者の子供ばかり居る私立に入って
スポーツでも県大会優勝とか

…俺を好きな女も多かったから


今回みたいな挨拶回りは
俺は文字通り、ホスト役として
儀礼事や、愛想笑いの苦手な
親父のフォローに、かなり奮闘した




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