いばら姫
頭上の板を少し押し上げ、覗く
長身の、特徴あるシルエットが
シャッター下の空間から、
街からの光を受けて、地面に影を延ばす
「 ――…やっぱり、青山か 」
――― もし此処で
… コンテストの後、
灰谷を見たあの時の様に
青山に声を掛けなかったら ――
普段は『ヒトのフリ』してる
だけど、
確実に俺の中に潜んでいる黒いモノが
頭の中で、重く 囁く
でも あの時とは違う
何か強い気持ちが、
それを一瞬で吹き消して
思いきり天上の、狭い扉を開けた ―――
シャッターを潜り、足音を追う
青山は、
換気扇とダクトのある脇道
やはり、体をびしょ濡れにして
この建物の侵入口を捜している
「 …… 青山 !! こっちだ!! 」
上背ある影は、かぶりを振って
俺の声に反応する
粗くて白い息は
喉の奥にひそかな音をたてて
目の前に着いた
「 ―― 岡田!
平気か?! 何ともないか?!」
―― 肩を揺する長い指
歪めた眉と、強い眼は
本気で俺を心配していて
……さっきの自分を動かせたモノ
きっと『良心』と呼ばれる場所が
チクリと、刺す様に痛む
「 …あんたこそ、薬抜けたのか? 」
青山は喉を詰めながら頷き
「 …ジョンさん…仲、から
水谷とお前が歩いて行くの見た…て
銃の音が、して、 」
「 …… 車の
バックファイアーか何かだろ 」
「 …それ、なら い… 」
――― ズルズルと
力が抜けたのか、
…まだ薬が抜け切っていないのか
青山は膝を付き、深い呼吸を繰り返す
「 … 青山、大丈夫だ
あのな、 ア 」
「『 …… リュウジー…?
そこにいるの、リュウジ? 』」
言葉を続けようとした隙間に
ダクトから伝わって来た、
ちょっと情けない、アズの声が響く ―――