無糖

願いなんて、遠いから

【願いなんて、遠いから】

 蝶が 笑ってくれた気がした

 だからわたしは 泣きだした




 呪縛に一番近い部屋で
  ひとりずぅっと


 もう一度だけ蝶に抱きしめられたら
  わたしは 絶対に


 その背中に腕を回すことが出来ると
  抱きしめた腕を

 受け入れられるのだと 思っていた





 けれど 今わたしが求めているのは

   違う腕だと 感じた時






 蝶が笑ってくれた気がした


  これからも人を愛して
   (そう言った蝶が笑ってくれた)






 ねえ 笑ってくれてる?

  空からわたしを見ていてくれる?
  羽ばたいて 囚われず



 世界を見渡して広い広い空。






 でもね まだ置いていかないで。

  そう叫んだわたしに


 やっぱり笑った蝶は

  わたしの背中を少しだけ押した。
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